海の底に引きずり込まれる...

海の深みに嵌るダウンカレントの恐怖

目次

上級者ポイントのペリリューへ

まだパラオに来て間もない頃のお話です。
その日はお休みでしたが、ガイドトレーニングも兼ねてダイビングへ。
ポイントはペリリューコーナー。
時として強い流れがあり、水深も深いことから上級者のポイントと言われています。
普段滅多に行くことのないポイントなのでわくわくが止まりません。
目的はロウニンアジの群れ。
普段群れることのないあの大きなロウニンアジが千匹以上で群れているのです。
またそれだけでなく、カジキやハンマーヘッドなどの超大物との遭遇も期待できます。
想像しただけでも胸が躍ります。

ペリリューコーナーのポイントマップ

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ポイントへ到着してエントリー。
なかなか速い流れがあったのでヘッドファーストで急ぎ目潜降。
リーフに辿り着いた後は、流れを避けドロップオフ沿いを進んでいきます。
先端に近づいていくと、そこにギラギラとした群れが。
そう!ロウニンアジの大群!感動です!

はじまりは突然に

ロウニンアジの群れを堪能し、エアーも50近くと残り少なくなってきたので
水深30mからいざ浮上開始。
感動の余韻に浸りつつも、いつも通り中性浮力を取りながら
ゆっくりと20m、15mと浮上していこうとします。

流されるままにドロップオフの際から離れたときでした。

あれ?耳に違和感。耳抜き、耳抜き、耳抜き...え?

ダイブコンピューターの表示を見ると

15m・・・18m・・・22m・・・

どんどん水深が落ちていきます。
一瞬何が起こったのか分かりません。
あれれ、上がってるつもりなのに下がっていく...

28m・・・35m・・・

周りは真っ青なブルーウォーターなので指標は何もありません。
ただ自分の水深が意図せぬまま徐々に下がっていってるのは確か。

これがダウンカレントか!あかん、やばい!

そう気付いたときには、あっという間に40m。エアーは50を切っています。
BCDに一気に給気し、フィンキックでなんとか少しづつ水深を上げていきます。
吐く泡は自分の周りをぐるぐる回り上に上がっていきません。
まるで洗濯機の中にいるみたい...
泡にまみれながら、ただひたすらに一生懸命フィンキック。。。
水深10mを切ったあたりでようやく流れから逃れました。

浮上するまで気は抜けない

もし残圧がもっと少なかったら?
40m地点で窒素酔いになっていたとしたら?
フィンが脱げてしまっていたら?
ダイブコンピュータを付けてなかったら?
考えるとゾッとしますね。
パラオではドロップオフにて流れの上から入り
流れにのって反対側のドロップオフから上がるケースが多いです。
もちろんダウンカレントに掴まらないように浮上するのですが。
流れが強いときにはどうしても変な流れになってしまったり
上級者のポイントだと「そこ」に目当てのものがいたりするわけです。
安全にボート上まで上がって来るところまでがダイビングです。
お目当てのものが見れても最後まで気を抜かずに。
むしろ浮上に関しては特に緊張感を持って行う必要があります。

無理はしない!ガイドの指示には従う!

ガイドのブリーフィングはしっかり聞きましょう。
見所はもちろんですが、注意事項がたくさんあります。
このときの私は調子に乗って、ロウニンアジの群れに夢中になりすぎていました。
そのことに寄って浮上のタイミングが少し遅れたためダウンカレントに掴まってしまったのです。
「あとちょっとだけ良いだろう。もうちょっとだけ・・・。」
これが危ないのです。
せっかく水中で良いものが見れても命を危険に晒しては意味がありません。
咄嗟の状況に対応できるようBCDは使い慣れたものを。
また浮力コントロールはもちろん、ダイブコンピューターの携帯も。
「安全」でなければ「楽しく」はないのです。

自分のスキルに過信せず、謙虚な気持ちでダイビングを楽しみましょう!